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「集めるだけでも一苦労…」 預貯金の口座凍結解除や不動産の相続登記に「出生から死亡までつながっている戸籍謄本」が必要になる理由

 戸籍制度がない国だと、どこにどんな相続人が隠れているかわからないので、遺言で財産の分与をはっきり示すのだという。日本でも、財産分与について記述した公正証書遺言(遺言者と証人2名が遺言書をもって公証役場へ出向き、公証人が確認し、3者が署名・捺印して作成)を残しておけば、遺族が口座の凍結解除のために戸籍謄本の収集に奔走するような手間は不要になる。

 戸籍謄本は、各市町村の役場へ郵送で申請し、郵送で受け取ることも可能で、時間はかかるが、移動距離が長い場合は郵送にしたほうが金銭的負担は小さくなる。

「戸籍証明の広域交付申請」が始まったが…

 実は戸籍法が改正され、今年3月1日から「戸籍証明の広域交付申請」というサービスが始まっている。本籍地のある市町村の役場で申請すれば、出生から死亡までつながる戸籍謄本をまとめて取得できるようになった。

 そのサービスを利用すれば、戸籍謄本を追って各地の役場を回る必要はなくないはずなのだが、サービスがスタートしたばかりの頃に、筆者が役場の住民課で聞いたところ、「申請が殺到していてサーバーがパンク状態で、開始初日に申請して1週間以上経ってもまだ出てこないものもある。役場を回った方が早いですね」とのことだった。時代が古いものほど出力に時間がかかるといい、母の場合、出生の記録は90年近く前にまでさかのぼるので、いつ出力されるのかまったく読めないという。

 すでに改善されたかというと、三重県鈴鹿市や千葉県浦安市、東京都昭島市など多くの市町村が発表しているリリースによると、「令和6年5月24日頃から国のシステムへの接続が不安定な状況が続いており、交付が困難」という状況で、まだ安定した運用ができていないようだ(その後復旧したとのリリースが出た自治体もある)。

 今はまだ“RPG”の旅に出たほうが早いかもしれない。

取材・文/清水典之(フリーライター)


*清水典之氏のさらに詳しい体験談〈【ルポ・遠距離相続の落とし穴】相続人が海外在住だと大変なことに…窓口に本人がいても「在外公館の署名証明が必要」と帰国する羽目になった「ゆうちょ銀行の口座凍結解除」〉はこちら

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