米『Forbes』誌の「日本人長者番付」トップ50が発表された。「日本一の大富豪」という栄冠を2年連続で手に入れたのは、「ユニクロ」創業者でファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏(75)。そして、柳井氏と並んで注目されたのが、「最年少」で初めてビリオネアとして名を連ねた人物だ。33歳で長者番付に載ったのは、どのような経営者なのか──。
「約11億5000万ドル(約1725億円)」──若くして巨額資産を手にして、最年少で長者番付41位に初ランクインしたのが、M&A総合研究所、通称「M&A総研」の佐上峻作社長(33)だ。
2018年に佐上氏が創業したM&A総研は、AIを駆使して企業の合併・買収(M&A)を仲介する。創業から3年8か月の2022年に東証グロース上場を果たした。同社ホームページによると入社3年目の平均年収は2323万円を誇る。なぜM&A総研はわずか数年でこれだけの実績をあげたのか。
「創業者の佐上氏は、全く新しいタイプの経営者なんです」
そう語るのは、上場時に佐上氏にインタビューした『経済界』編集局長・関慎夫氏だ。
「これまでM&A仲介業を手がけるのは金融関係か営業マンでしたが、佐上氏は元プログラマーで、生粋のエンジニア。M&A総研はビッグデータとAIのアルゴリズムを組み合わせ、企業と企業をマッチングする。金融というより“ITベンチャー”です。自社開発している独自のテクノロジーが強みで、不動産関連会社とIT企業といった異業種マッチングの成立を重ねて急成長しました」
佐上氏が追求するビジネススタイルは、営業利益率が50%を超える時価総額日本3位のファクトリー・オートメーションメーカー「キーエンス」に通じる企業理念だ。関氏が続ける。
「社員の行動やパフォーマンスを可視化して、無駄を徹底的に省いて効率化を進めるキーエンスのやり方を、佐上氏は意識的に取り入れています。私の取材時も、佐上氏は理路整然と『酒席を伴うなど昔ながらの営業は意味がないから一切やりません』と言い切りました。このあたりも会社のルールとして接待を禁じているキーエンスに近いものを感じます」