配偶者に先立たれ、子供もいない──そんなひとり世帯が亡くなった時、財産はどうなるのか。司法書士の村田洋介氏が解説する。
「妻や子がいないと、相続順位が第2順位の直系尊属である両親や祖父母へ、さらに第3順位の傍系の血族である兄弟姉妹、その子供である甥・姪へ権利が移行します。法律上相続できるのはそこまでなので、兄弟がおらず両親や祖父母が死没しているケースでは、遺言書の作成など何らかの対策をしていないと財産を受け継ぐ人がいないことになります」
相続人がいない場合、その遺産は「国庫帰属財産」として国庫に引き渡される。2022年度に国庫に引き渡された相続財産額は約768億円と過去最高を記録した。
2014年には岩手県の大地主の男性の遺言書に不備があったために、約20億円の財産のほとんどが国庫帰属となったケースもあった。
そのケースでは生前に作成していた遺言書に署名と押印をしていなかったために無効となり、遺産で寄付などを計画していた故人の希望が叶わなかったという。
「国庫帰属を避けたいという人は、『遺贈』が選択肢になります。お世話になった人や母校など、血縁関係のない第三者や団体でも財産を渡すことができます」(村田氏)
遺贈の際は遺言書で遺産を渡す相手である「受遺者」を明記しておく必要がある。遺贈先の正式名称や所在地、さらに受遺者の身分証明書があるとより正確になる。
「受遺者の意思をあらかじめ確認しておくこと、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうが確実です。ただし、遺贈では相続税の2割加算が適用される財産もあります」(村田氏)
相続人がいないケースでは、最後の社会貢献として遺贈が選択肢になるかもしれない。
※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号