「今の大阪の課題は“介護保険料”と“クジラ”、その2つによく表われています」──そう語るのは兵庫県明石市長を務めた泉房穂氏。3期12年の在任中は「子育ての街」を掲げ、市の人口増を実現した泉氏は大阪の現状をどう見るか。ジャーナリスト・相澤冬樹がインタビューした。
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まず泉氏が指摘するのが大阪の「介護保険料」についてだ。
「全国の市町村別の介護保険料が先月発表されて、一番高い“ワースト1”は大阪市でした。全国平均が6225円なのに大阪市は9249円ですよ。3000円以上も高い。それだけじゃありません。ワースト2は守口市、ワースト3は門真市で、3位までを大阪府の自治体が占めるんです。保険料が高いのは過疎地がほとんどなのに、どうしてなんですか? 全部、維新(大阪維新の会)の市長が長いことトップを務めています。
私もそうでしたが、全国の市町村長は介護保険料を安くするため知恵を絞っています。介護予防事業とか、介護保険以外の高齢者福祉の充実化とか、介護事業者のチェックなど努力を重ねて市民負担を抑えています。大阪ではそういう工夫が足りないとしか言いようがありません」
もう一つの“クジラ”とは、大阪湾から淀川に迷い込んで死んだクジラの処理費用のことだ。
「当初の見積もりでは3000万円台だったのに、業者と交渉の末に8000万円以上になった。理由を明確にしないと、大阪市が業者の利益を図ったんじゃないかと疑われても仕方がない。そこは検証すべきなのに、あまり声が上がりません。“市民より業者優先”の姿勢には疑問を覚えます」
「子供は親の持ち物じゃない」
維新が進める万博とIR(統合型リゾート)にも手厳しい。
「カジノには、今でもはっきり反対です。子供たちの未来に何のいいこともない。万博は今さら中止にはできないでしょうが、規模と予算を縮小すべき。あれだけのものを建てて、終わったらすぐ壊す。業者が二度儲かる、利権政治の象徴みたいなものです。その費用は最終的に国民と府・市民が負担するわけです」
維新が進める教育無償化などの子育て施策については「自民党時代よりよくなった」とするものの、吉村洋文・知事が次期衆院選の公約に盛り込むとした0歳児選挙権は、「アカンね」と断じる。
子供が成長するまでは親の代理投票を想定し、子育て世代の意向を政治に反映させる狙いとされるが、泉氏は「選挙権は一人ひとり固有の権利で誰も奪えない」と説く。