日本の「物価」はいつの間にかアジアのなかでも突出して安い水準になっていた。掲載の棒グラフは、アジア各国でのダイソーの価格を図示したものだ。日本では多くの商品が「100円均一」であることでお馴染みだが、中国、インド、そして東南アジア諸国でも、日本の2倍以上の水準の値付けとなっているとわかる。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が解説する。
「アジア各国では人件費やテナント料の高騰などにより、日本で100円で買える雑貨なども倍以上の価格になっています。一方の日本は賃金も上がりにくく、長くデフレが続いて企業が価格転嫁できませんでした。
100円ショップだけでなく、スーパーの特売品や理髪店の1000円カットなど何でも格安で、訪日したアジアの人々は『なぜあらゆるモノやサービスがこれほど安いのか』と一様に驚きます」
アジア進出した飲食チェーン店の価格設定を見ても、日本の安さが際立つ。回転寿司のスシローは、国内では“高級ネタ”でも一皿300円台だが、シンガポールや香港、タイでは同じネタが軒並み500円を超える。
CoCo壱番屋のカレーは、シンガポールでは日本の2倍近い値段で提供されている。
イギリスの経済専門誌『エコノミスト』が2024年1月に発表した「ビッグマック指数」(各国のビッグマックの平均価格を示した指数)を見ても、日本の447円という額は、シンガポール(729円)や韓国(604円)、タイ(556円)を大きく下回り、ベトナム(442円)とほぼ同水準だ(2024年1月31日時点での円換算)。
前出・永濱氏はこう続ける。
「その国の通貨でどれだけのモノやサービスが買えるかという『購買力』を示す『実質実効為替レート』を見ると、現在の日本は1970年以降で最低の水準にあります。1ドル360円の固定相場制だった1970年代前半の水準まで購買力が低下したということです。一方、タイやインドネシアの実質実効為替レートは右肩上がりです」