中学受験の「偏差値50前後」が持つ意味
今回の相談は、「小学校の成績は良かったのに塾では思うほど偏差値が高くなく、有名中学を狙うのが難しい」と悩む以下の父親からだ。
《5年生から中学受験塾に子供を入れていますが、このところ偏差値はずっと50前後(日能研偏差値)を推移しています。学校での成績はそこそこ良かったので、御三家は無理でも、それなりに名前の知られた中学に入れるだろうと期待していたのですが、この成績で受かりそうな学校は、今まで聞いたことのない学校が多く、どこを選べば良いかわからない。
最終的には偏差値で選ばざるをえないが、中学受験って本当にお金も手間もかかって、ここまで苦労してその学校を目指す価値があるのだろうかという気持ちを消すことができない。だから、親も子もモチベーションが上がらない。仮に受かったとしても、公立の地元中学校と比べて、高い学費のかかる私立中学に進学することに、どんなメリットがあるのでしょうか》(45歳、会社員男性)
この質問に対し、東田氏は「中学受験の偏差値を、高校受験の偏差値と一緒にしてはいけない」という。
「公立中の中学3年生のほぼ全員が受験する高校受験と違い、中学受験をするのは、小学校の中では真ん中よりも上の層で、学力レベルが高い子たちが集まっています。だからその中での偏差値50は、小学校の中では上位に位置します。その構図を理解していないと、『偏差値50の学校に進学するために、こんなにお金や時間をかけるのは……』という感覚に陥りがちですが、一般で知名度が低くても、偏差値50前後の中学校はまぎれもなく進学校です。
いわゆる御三家のようなブランド校に行けるのは、本当に上澄みの一握りなので、こだわりを持てば持つほど、現実の子供の成績とのギャップが浮き彫りになって、学校に価値を見いだせなくなります。その認識を改めず、ブランドに過剰にこだわる親というのは、子供に過大な負荷をかけかねず、中学受験に向いていないと言わざるをえません」(東田氏)
自身に中学受験の経験がない親は、高校や大学受験の感覚で「偏差値」を判断してしまうのかもしれない。