中学受験熱が高まりを見せるなか、子供の塾通いをサポートし、自宅学習時には勉強の相手役にもなる保護者にも、高い“伴走力”が求められている。“御三家”や“難関校”と呼ばれるような上位校は無理でも、少しでもいい学校に入れようと思い、子供を叱咤激励するが、我が子がまったくやる気を見せないことに苛立ちを覚える人は多いようだ。そんなボリュームゾーンにいる保護者の赤裸々な悩みについて、フリーライターの清水典之氏が識者にぶつけた。(全5回シリーズの第2回。第1回から読む)
【シリーズ全5回】
■お金も時間もかかる中学受験 「偏差値下位の私立中学なら進学する意味はない」の意見を高校受験塾の現役講師はどう考えるか
■中学受験で“勉強から逃げる子”は晩熟タイプかもしれない 偏差値50台の私立中から高校受験で開成に合格する例も少なくない
■「高1でbe動詞がわからない」受け身で過大な量の勉強を続けた結果、中高一貫校の“深海魚”に 中学受験にありがちな「勉強を強制させられるリスク」
■スポーツや習い事をやめて勉強に専念させる価値はあるのか? 現役塾講師が明かす「中学受験最大のデメリット」
■「子供にトラウマを残しそう…」悩ましい中学受験から“撤退”の決断 現役塾講師は期限を重視、撤退後の勉強への向き合い方
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子供に受験生としての自覚がまったくないことに苛立つ保護者は多い。中学受験の経験がない親だと、それが普通なのか、普通でないのかも判断がつかず、イライラが募るばかりだろう。
《塾にはちゃんと通っているのですが、6年生のこの時期(夏休み前)になっても、子供からまったくやる気が感じられません。間違っても自分から勉強しようとはしないし、塾の宿題など、やらなければいけないことでも、やれと言わない限り絶対にやろうとしない。監視していないと必ずサボって、スマホでYouTubeを見始める。サボれたらラッキーと思っているようです。とても受験生とは思えないのです。
5年生の頃に比べて成績がだんだん下がっていて、他の子たちは頑張っているんだろうなと思って焦るのですが、本人はいたって平気で、気に留める素振りもない。どうすればやる気を出させることができますか》(38歳、専業主婦)
Xのアカウント名「東京高校受験主義」で4.6万人のフォロワーをもち、この5月に『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』を上梓した塾講師の東田高志氏は、中学受験に向かう子供のやる気は「その子の成長度合いや適性による」という。
難関中学受験で「早生まれは不利」のデータも
「中学受験には向くタイプと向かないタイプがあります。向いているのは、知的好奇心が強く、心の成長が早い『早熟タイプ』で、かつ『競争適性』のある子です。
早熟度というのは、生まれ持って定められた成長スピードと言い換えられるでしょう。小学6年生の時点では、選抜時期が早すぎるがゆえに、努力では埋めようのない成長差が生じます。20年ほど前のデータですが、関西の雄、灘中の2002年から2005年までの合格者で見ると、541人中、4〜6月生まれががもっとも多く、36.4%(197人)であるのに対し、1〜3月生まれの“早生まれ”は14.0%(76人)で、半数以下です。もちろん、個人差があって早生まれでも早熟の子はいますが、12歳の中学受験には、やはり本人の精神的な成長度合いが大きく影響すると言えるでしょう」