晩熟の子たちは中学受験で難関校には入りにくい
早熟でない子供の場合、中学受験よりも高校受験に注力するほうが相応しいケースもあるという。
「晩熟タイプの子は中学受験にはあまり向いていないので、無理して中学受験をすると、本来のポテンシャルに比べて低いレベルの学校にしか進学できない可能性が高くなります。
15歳にもなれば、晩熟タイプの子も本来持っているポテンシャルを発揮できるようになります。毎年、偏差値50台の中堅レベルの私立中高一貫校から、外部受験で開成高校に合格する子がでます。中堅の中高一貫校には、15歳の高校受験に回ったほうが、力を発揮できていた子たちも大勢いるはずです。
公立中学校から都立高校のトップ校に合格した子たちの偏差値推移の追跡データを分析すると、特に男子で顕著ですが、中1の頃から比べて偏差値が平均で5〜6くらい伸びていて、なかには3年間で10以上伸びる子もいます。こうした晩熟タイプの子たちは、高校受験に照準を置いたからこそ大きく学力が伸びたといえます。
『中学受験しかない』という思い込みを捨て、進路の分岐点を15歳まで待ってあげるという選択肢を採用する考えもあっていいはずです」(東田氏)
もちろん、公立の地元中学に進んだからといって、すべての子が勉強に対してやる気を出すとは限らないが、少なくとも、“晩熟の子”は中学受験にあまり向いていないということを頭の隅に置いておくと、冷静になるきっかけになるかもしれない。きつく叱ったところで、勉強に対するやる気など生まれないだろう。
次回は、こうしたやる気のない子に、強制的に勉強させるべきなのかという悩みに、東田氏が答える。
(第3回に続く)
【プロフィール】
東田高志(ひがしだ・たかし)/Xで 4.6万 フォロワー(2024年7月現在)のいる教育系インフルエンサー。首都圏の受験情報を毎日配信している。実生活では、20 年以上のキャリアを持つ塾講師。学校と塾の変化を見続け、現場を知り尽くし、小・中学生を教えてきた。教え子のなかには、中学受験の撤退組、全滅組がおり、中学受験が合わなかったと感じる子どもをたくさん見てきた。2024年5月、保護者からの疑問に答える『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)を上梓。フィールドワークとして都内各地の公立中学校や都立高校を訪問し、区議会議員とのコラボイベントも開催している。
取材・文/清水典之(フリーライター)