高齢化が進む日本では、年間の死亡者数も増加傾向にあり、厚労省の2022年の「人口動態統計(確定数)によると、死亡者数は約157万人で過去最多を記録している。
日本が“多死社会”を迎えたことで、成長が見込まれているのが葬儀関連の市場だ。都市部を中心に葬儀の簡素化が進んではいるものの、需要は確実にあり、異業種からの参入も活発化し競争が激化している。そんななかで、最新テクノロジーを活用した新しい葬祭ビジネスも始まっている。
遺影が空中に浮かびあがるフォトフレームを開発・販売しているのが、写真加工をメインに手がけるアスカネットである。
「弊社では、特許を取得した『ASKA3Dプレート』という特殊な透過プレートを使い、空中に映像を浮かび上がらせる空中ディスプレイの事業を展開しており、センサーと組み合わせて空中タッチパネルを実用化しています。この空中ディスプレイの応用先の一つとして、遺影が浮かび上がる『OmokageMINI』を開発しました」(フューネラル事業部マーケティンググループ企画開発室課長・青砥剛氏)
『OmokageMINI』には、ASKA3Dプレートに対して45度の角度で、内部にデジタルフォトフレームが配置されている。外部から見ると、映像が浮かび上がって見えるというしくみ。タッチパネル機能は搭載していないが、写真だけなく、動画も再生できる。葬儀では、『OmokageMINI』を専用の焼香台に入れて使う。葬祭場向けの備品として販売しているが、一般向けにも販売していて、空中フォトフレームとして利用することもできる。
「目の前に浮かび上がった故人の写真を見ながらお焼香をするので、参列者の方々には『思いがこもる』と評価していただいています。葬儀場の方に聞いた話では、最近の葬儀は参列者が減っていて、お経が終わる前に焼香が終わってしまうことが多いが、空中に遺影を表示すると、じっと見入る方が多く、焼香のペースがゆっくりになるというメリットがあるそうです」(青砥氏)