大きさ、色、配置など券面ごとの違い
ユニバーサルデザインの観点でも、新紙幣にはさまざまな工夫がなされている。前出のSNS上であがっている疑問「一万円札と千円札の1のデザインが違うのはなぜか」にも狙いがあった。担当者が語る。
「様式を決定した財務省からは、『一万円券と千円券の券種識別性向上を目的に“1”の書体を変更した』と聞いています。また、新しい銀行券では、従来よりも表裏の額面数字を大きくして、券種を識別しやすくしています」
このほか紙幣を認識しやすくするために、細かなデザイン変更が施されているという。
「新しい銀行券の大きさについては、各券種の短辺は同一(76mm)ですが、長辺は識別性を向上させる観点から、長い方から順に一万円券(160mm)、五千円券(156mm)、千円券(150mm)となっています。ちなみに各券種のサイズは今回の改刷では変更しておりません。新しい銀行券の色については、従来の主体色を踏襲しつつ、券種識別性を更に高めた色彩としています。
また、ホログラムとすき入れの形や配置を券種毎に変えています。ほかにも指で触って券種を識別できるマークを、従来よりも触った際に分かりやすい形(11本の斜線)に統一し、券種毎に位置を変えることで券種を識別しやすくしているのです」
なお、新紙幣に採用された人物についても、偽造防止の着眼点が反映されているのだとか。
「肖像について、財務省によれば、近年の改刷では、『偽造防止の観点からなるべく精密な写真が入手できること』、『肖像彫刻の観点からみて品格のあるお札にふさわしい肖像であること』、『肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められること』といった観点を踏まえ、明治以降の人物から採用しているようです。
誰でも、いつでも、どこでも、安心して使える現金は、今後とも国民生活や経済活動において、大きな役割を果たしていくものと考えられます。現金に対する需要がある限り、日本銀行としては、皆さんが安心して使える現金の供給を、責任をもって続けていく方針です」
日本の高度な偽造防止技術と、誰にでも使いやすいユニバーサルデザインの取り入れという意図。近年キャッシュレス化が急速に進んでいるが、災害時などのことを考えると、まだ紙幣の必要性は高い。今回の新紙幣の発行には大きな意味があるだろう。
(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio)