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「資さんブランドを甘く見ていた」資さんうどん東京進出で“外様”COOが語る「北九州から全国展開」の展望 波乱の新規出店を助けたベテラン従業員たちの心意気

拡大路線への転換と従業員の反発

 従業員たちはそれまで、地域に根付くローカルチェーンとして仕事をしてきた人たちだ。“外様”である新しい社長や役員の戦略を歓迎しない従業員も一定数いたという。大井氏が言う。

「うどんのことなんか、なんにも知らない“外様経営者”の戯言と思われたのでしょう。ただ、社長の佐藤は経営のプロですし、私も飲食業ではかなりの経験を積んでいます。資さんの味があれば、“北九州の資さん”から“日本の資さん”になれると考え、出店地域の拡大に舵を切りました」

 佐藤氏や大井氏が経営を引き継いだのが2018年3月で、同年11月には福岡県飯塚市に飯塚穂波店をオープンする。

「もともとの従業員たちのなかには、資さんうどんは北九州のものだと考え、他県他市にオープンすることに不安を感じる人が多かった。私たち経営陣にとっては逆風のなかでの船出でした。ただ、出店した先でお客様に受け入れてもらえる自信はありました。お客様が動きやすく、従業員のストレスにもならないように計算して、店内のレイアウトも一新しました。新店用の従業員を募集してイチから教育し、ニューオープンに備えたのです」(大井氏)

 経営陣としては万全を期しての船出だったが、蓋を開けてみると混乱の連続だった――。

何も言わずヘルプに来てくれたベテラン従業員たち

 飯塚穂波店はオープン後、連日のように客が押し寄せ、それまでの他店舗にない水準の売り上げを記録したが、バックヤードで様々な問題が噴出したという。大井氏が振り返る。

「会社としては久しぶりの新店だったので、かなり力が入っていました。オープニングスタッフの教育にも十分時間をかけてスタートを切ったのですが、あまりの客足にオペレーションが追いつかず、オープンから1か月ほどは混乱の毎日でした。原因をいろいろ考えたのですが、我々経営陣が“資さんブランド”を甘く見ていたことが一番大きかったように思います」

 そんな時、である。

「なんや、全然だめやないか」――のっそりと厨房に入ってきたのは、既存店で長くキャリアを積んできたベテラン従業員だった。片頬に笑みを浮かべながら、「店の前は行列でごったがえしちょるぞ」と続けると、普段着からユニフォームに着替え、黙々と作業を手伝い始めたのだ。

 大井氏は、今でもその場面をよく覚えているという。

「お客様の数があまりに多くて、対応しきれない。従業員は疲弊するし、かなりまずい状況でした。そんな時に、こちらは何にも言ってないのに、既存店から資さん歴の長い従業員さんたちが助けに来てくれたのです。

 北九州は荒っぽい人が多いイメージを持たれがちですが、根は真面目で人がいい。とにかく彼らベテランさんたちのお陰でなんとか新店オープンを乗り切ることができました。そうしたことがあって、だんだん経営陣と既存の従業員さんたちのコミュニケーションも密になっていき、今では一丸となって“北九州の資さんうどん”から、“日本の資さんうどん”に向けて邁進しています」

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 現場で話し合いを重ね、当初は全国進出に懐疑的だった既存の従業員たちにも、経営陣の「資さんの素晴らしさを広げたい」という考えが伝わっていったという。2023年11月にはうどん激戦区の大阪にも進出、グループトップクラスの人気店となっている。7月13日からは東京都の千代田区内神田で、3日間限定のポップアップ店もオープン。

 そのオープン初日には、資さんうどんの「東京進出」も発表された。北九州で育まれ、少しずつ広がっていったこだわりの味は、東京でも市民権を得ていくのだろうか。

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