第二次ベビーブーム下の日本では「出生抑制努力」が宣言されていた
「少子化は必ずしも悪いことばかりではありません」
そう断言するのは、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の小幡績(おばたせき)さんだ。
「むしろ、かつては少子化ではなく多子化こそが悪」とされたと分析する。
「人口爆発が地球上の最大の問題とされた1970年代、人口増加を止められなかったアフリカ諸国は世界各国からひどく非難され、一人っ子政策を強引に進めた中国は“成功した”と評価されました。でもいまやアフリカはHIV感染症によって人口が減少しているし、中国の一人っ子政策は間違いだったと批判されています。
日本も、1971年からの第二次ベビーブームや1973年のオイルショックを受けて、1974年の『人口白書』で出生抑制への努力を打ち出したこともありましたが、現在は180度変わり、“人口を増やせ”という。つまり、人口に関する常識は、時代の状況の都合に合わせてコロコロ変わるんです」(小幡さん)
現在の少子化について、小幡さんは「経済発展がもたらしたものでもある」と続ける。
「近代は衛生面の改善や医療の進歩で子供が死ななくなり、少数の出産で充分な数の子供が残せるようになりました。同時に賃金水準が上がって働く機会が増えたことから、出産育児に時間を使うよりも働く時間を増やして所得を増やそうという流れになった。そこで稼いだお金を“少数精鋭”の子供の教育に費やすことで少子化の傾向が定着しました。
これを逆流させることは難しく、日本の経済が発展して所得水準が上がって人々が豊かになった以上、少子化を止めることは至難の業です」