女性の社会進出が進んだことと少子化を結びつける議論は尽きることがないが、広井さんは「そこにも誤解があります」と断言する。
「女性が働くようになって少子化が進んだとの意見もありますが、女性の就業率と出生率の相関を国際比較すると、意外なことに、女性の就業率が高い国の方が出生率も高い。残念なことに、日本は女性の就業率も出生率も低い国です。
日本は仕事と子育ての両立が難しく、キャリアか育児かの二者択一を迫られるケースが多い。これも未婚化や晩婚化が進む大きな要因で、仕事と子育てを両立できる社会システムが求められます」
「バラマキに子供を増やす効果はゼロ」
国の少子化対策には的外れで意味をなしていないという指摘があると同時に、総花的で「バラマキではないか」との批判も根強い。慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の小幡績(おばたせき)さんが指摘する。
「政治家はバカではありませんから、少子化対策の名目でお金をバラまけば選挙の際に票になることをちゃんと知っています。
ただしバラマキに子供を増やす効果はゼロ。それどころか、“子育てにはそんなにお金がかかるんだ。だったらやめよう”と若者が躊躇し、逆効果になる可能性すらあるでしょう」(小幡さん)
少子化が問題視されるとき、国民が被る不安や負担として労働力不足や市場の減少、行政サービスの質の低下などが危惧される。