だが広井さんは「短期的にはあまり心配はいらない」と言う。
「サービスを提供する人と同時にサービスを受ける人も減るので、単純に言えば需要と供給が相殺されて直ちに人手不足は起きません。
ただ、同時に進行する高齢化により人口に占める高齢者の割合が増していくので、サービスの出し手と受け手が釣り合わなくなることは確かです。ところが他方、AI(人工知能)などの技術が人間にとって代わるため大量の失業者、つまり人手余りが生じることが昨今議論されています。そうすると人手不足と人手余りが相殺されて均衡する可能性があります」
あらゆる場面でAIやロボットの活躍に期待が高まるなか、人口が減る社会では、これまでとは違う働き方も求められる。経済学者で、『次なる100年:歴史の危機から学ぶこと』の著者である水野和夫さんは、こう語る。
「いまの日本人の年間労働時間は1600時間ほどで、ドイツ人は1300時間弱ほど。両国における1人当たりのGDPはほぼ同じなので、同じモノを作るのに日本人はドイツ人よりも2割以上も多く働いていることになります。労働者の能力に差があるとは思えないので、日本人はドイツ人より無駄なことを2割以上していると考えられる。
労働の転換でこうした無駄な部分を効率化できれば労働時間を短縮できます。会議は必要最低限にして、空き家を生かして新築を建てないようにするとか、宅配便の即日配達や再配達をやめるとか。そうしたことで自分の時間を豊かにして人生を楽しむことができるはずです」
※女性セブン2024年8月1日号