30万人の商圏規模を維持
「戦略的に縮む」という成長モデルへの転換は、地域経営においても必要だ。もはや「街を拡大させることが成功」という時代は終わった。
人口減少社会の街づくりで必要な視点は、商圏規模の維持である。商圏が縮小すれば多くの民間事業者は事業を継続できなくなるからだ。不便な場所となれば、人口流出が進む。
暮らしに必要な商品やサービスの提供体制を維持しようと思えば、最低でも30万人程度は必要だろう。だからといって市町村合併による「30万人都市」をつくれということではない。全国に何か所か、地域が一体となった商圏を築く必要があるということだ。
地域経営においては、もう1つ「戦略的に縮む」ことが求められる点がある。30万人商圏の中に人口集積地を築くことだ。人々が点在して暮らし続けると社会コストを押し上げる。マンパワーが圧倒的に不足する中で地域社会を機能させるには、地域ごとにある程度人々が集まり住む街づくりが欠かせない。
日本は遠からず「小さな国」となるが、問題の本質は人口の多寡ではない。問われているのは、「小さな国」に適った社会を築けるかどうかだ。「戦略的に縮む」ことに成功すれば、日本は豊かな国であり続けられる。
(前編から読む)
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、人口減少戦略議連特別顧問、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。累計100万部突破のベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『世界100年カレンダー』(朝日新書)、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)など著書多数。最新刊は『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)。
※週刊ポスト2024年8月9日号