【2】治療開始から3か月経過しても治らない(軽度の場合)
「歯周病を治すのは難しい」というイメージが定着しているせいか、長期間にわたって通院させられても疑問に思わない患者が多い。だが、適切な治療や検査が行なわれず、通院が長引く場合もある。弘岡氏によると、軽度の「歯肉炎」なら正しいセルフケアの徹底で完治させることが可能だ。
「歯肉の出血は歯周病のサインなので、すぐに歯科医院を受診して、早期に治療を開始することが大切です。歯周炎の治療は、SRP(スケーリング&ルートプレーニング)です。専用の器具で歯周ポケット内のバイオフィルムや歯石を除去するので、歯科医院で治療を受ける必要があります」
軽度の歯周炎なら、適切なSRPを受けると、すぐに効果が出てくるという。目安は3か月。それ以上続けても症状に変化が表われていないとしたら、歯周病の専門医などに相談が必要だ。ただし、次の項目もセットで考えるべきだ。
【3】正しいセルフケアを指導してくれるか
弘岡氏はセルフケアの重要性を力説する。
「歯周病は歯科医院の治療だけではなく、患者がセルフケアを正しくできないと治りません。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシ(注:通常の歯ブラシより頭の部分が小さく、細かい箇所も磨くことができるブラシ)を正しく使うことが必要不可欠ですが、慣れていない日本人には意外と難しい。必ず歯科医院で指導を受けて、マスターしてください」
手が大きい男性の場合、フロスを口に入れることにも苦労する。また、フロスを歯と歯の間に通すというだけで済ませてしまう人も多いが、正しくは各々の歯の側面にフロスを沿わせて上下させ、付着したプラークをこそぎ落とすように除去する。
こうしたセルフケアを行なうと、驚くほどの効果が出るが、熱心に指導する歯科医院は意外に少ない。それには理由があると、複数の歯科医が証言する。
「短期間に歯周病を完治させると、経営に貢献しないと考える歯科医もいる。歯周病が進行して、外科的な処置を行なうほうが、治療費は高額になるからでしょう」
正しい歯周病治療を知る方法としては、日本歯周病学会のガイドラインなども参考にしてほしい。
【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。最新著書は『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。
※週刊ポスト2024年8月9日号