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国民年金加入5年延長見送りで放置される「保険料の“取られ損”」 60歳以上のサラリーマンは1人270万円もの年金損失

14兆円が奪われていく

 本来、国民年金の加入期間延長は、こうした保険料“取られ損”の解消につながるはずだった。前出の北村氏の指摘だ。

「国民年金を45年加入にすれば、60歳以降も厚生年金に加入しているサラリーマンは支払った保険料が基礎年金の金額に反映されることになり、制度の矛盾はかなり解消されたはずです。しかし、見送りにより保険料を払っても増えるのは2階部分だけという矛盾がそのまま残ることになった」

 年金局長が「力不足をお詫び」すべき相手は政府の審議委員ではなくサラリーマンのはずなのだ。しかも、政府がサラリーマンの「年金収奪」システムを温存した裏には、さらなる悪だくみがある。

 現在、雇用延長等で働く60~69歳の会社員は全国に約532万人。政府が保険料を取りながら払わずに済ませている年金額を1人270万円と計算すると、ざっと14兆円もの年金が奪われている。

 そのうえ、雇用延長で60歳以降も会社で働く人は今後さらに増えていく。この仕組みを残したうえで、厚生年金の適用拡大で加入者を増やし、「年金収奪」を加速させようとしているのだ。岸田首相は見せかけの減税や「酷暑対策」はこれでもかとアピールするくせに、やるべき改革をやらず国民の年金損失を拡大させているのである。

※週刊ポスト2024年8月16・23日号

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