政府は「物流2024年問題」に関する関係閣僚会議で、宅配便の再配達を減らすため、玄関前に荷物を置く「置き配」を選択した場合に消費者に最大5円分のポイントを付与する実証事業を10月から始めると公表した。さらに、既存の高速道路の路肩や中央分離帯などに物流専用レーンを設け、人手を使わず荷物を運ぶ「自動物流道路」を2030年代半ばを目処に整備する計画も発表した。果たしてこれらの対策は「2024年問題」の解決につながるのか?
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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政府の試算では、このまま「物流2024年問題」への対策を行わなければ、営業用トラックの輸送能力は2024年に14.2%不足、2030年には34.1%不足すると予想されている。また、全日本トラック協会によれば、輸送量にして2024年は4.0億トン、2030年には9.4億トンの荷物を運べなくなるというが、倒産が増えていることを考え合わせると、状況はこれらの数字よりもっと深刻である可能性がある。
運転手不足が深刻化してきたことを受けて、政府は2023年に「物流革新緊急パッケージ」を対策としてまとめた。だが、働き方改革関連法の成立は2018年だ。運転手不足はこの時点で分かっていたことで、5年も経ってから「緊急」対策を打ち出すというのはあまりに遅い。しかも、盛り込まれた目玉政策は付け焼き刃の印象が強い。
「自動運転」では配送作業は終わらない
例えば、消費者の行動変容を促すための再配送の見直しだ。再配達率の半減に向けて自宅の玄関前などに荷物を置く「置き配」や、コンビニでの受け取りを選んだ消費者にポイントを付与する制度を導入。ただ、個人宅配には一定の効果はあっても、輸送の多数を占める企業間の取引には意味をなさない。
物流の効率化策として打ち出した鉄道や船舶(貨物船)に代替する「モーダルシフト」の推進は、大きな方向性としては間違ってはいない。だが、運送会社の過当競争を放置したままではうまく行かないだろう。しかも今後10年で船舶や鉄道による輸送量の倍増を目指すとしている。そんな長い時間をかけることのどこが「緊急対策」なのか。船員の不足も深刻だ。船の輸送力を増強するには港湾の規模や設備の拡充も必要となる。鉄道は自然災害に弱い。