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航空業界が直面する「三重苦」 パイロット・整備士・空港業務従業員のすべてが不足する綱渡り状況

航空業界ではパイロットが大量引退する「2030年問題」が待ち受けている(写真:イメージマート)

航空業界ではパイロットが大量引退する「2030年問題」が待ち受けている(写真:イメージマート)

 2024年1月2日に羽田空港で起きた日本航空と海上保安庁の航空機同士の接触事故は、今なお記憶に新しい。再発防止に向けた対策は引き続き協議されているが、結論を得られるまでには至っていない。そもそも、航空業界の人手不足は深刻で、万全の態勢というには限界があるという。「多くの人命を預かる仕事」の現場は、どのようになっているのか?

 人口減少問題の第一人者であるジャーナリストの河合雅司氏が最新著『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』をもとに解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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 航空業界では、パイロットが大量引退する「2030年問題」が知られているが、航空整備士も高年齢化が進んでおり、深刻な人手不足が懸念されている。

 国土交通省によれば、主要航空会社と整備会社を合わせた整備士の年齢構成は50歳以上が約4割を占め、整備士資格を持つ約8500人のうち約2000人が今後10年ほどで退職する見込みだという。

 整備は運航の安全を支える重要な業務であり、航空機の着陸から離陸までの間に行う「ライン整備」と、航空機を格納庫に入れて客室内の座席仕様の変更やエンジン交換など詳細な点検などを行う「ドック整備」に大別される。これらの業務を担うにはそれぞれの作業に応じたライセンスを取得して航空各社の社内教育訓練を十分に受ける必要がある。パイロットと同じく一朝一夕には養成できない。

 ライン整備に携わる人材のやり繰りがつかなくなれば、航空機の発着時間の遅れにつながる。すでに一部の空港では、整備士不足が原因で増便や新規就航への対応が即座にできなかったという事例が起きている。

「航空整備士離れ」も進んでいる。全国9校の航空専門学校(指定養成施設)は整備人材全体の6割強を供給しているが、コロナ禍前から入学者の減少が見られ、就職しても離職する人が増加している。

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