野生の動物が原因で交通事故が発生した場合、その責任の所在はどう決められるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する
【質問】
山奥で起きた事故です。山道を軽トラで走行中に熊が横切り、急ブレーキ。その瞬間、後ろのバイクが衝突。運転手も熊を目撃したようで、仕方のない事故だといい、走り去りました。今回は運がよかったです。次も同じような事態になったら、衝突してきた車の損害などは、私が弁償しなければいけませんか。
【回答】
『道交法』24条は「危険を防止するためやむを得ない場合を除き……急ブレーキをかけてはならない」と規定しています。そこで急ブレーキをかけたことが、やむを得ないといえるかがポイントになります。
狭い山道での急ハンドルが危険だからといって、承知して動物と衝突すれば『鳥獣保護法』の禁止する、野生動物への損傷を与えかねません。また、大型動物に衝突した場合、自車に毀損が予想され、ケガをすることも考えられます。
ともあれ、衝突は回避すべきで、そうであれば、急ハンドルにおける場所的ゆとりや飛び出しにより、徐々に減速する時間的な余裕もなければ、急ブレーキはやはり、やむを得ない行動です。