その場合、追突してきた後続車は、同法26条に基づき「その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を」保持する義務があり、むしろ、追突した後続車の責任が問題になります。よって、衝突回避を行なうために急ブレーキをかけて事故になっても、刑事責任を問われることはないと思います。
しかし、「走行中の自動車がキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は、自動車の運転者が適切な運転操作を行なうことにより死傷事故を回避することを期待することができる」と判断した例もあります。これは高速道路という急ブレーキも急ハンドルも危険な場所で発生した事故ですが、小動物なら衝突やむなしと読める考え方となります。
なお、民事の人身事故の賠償責任では、運転者の無過失を証明しない限り、免責されません。動物の出没が予想される場所では、特に注意深い運転が求められ、無過失の証明に苦労するでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年8月16・23日号