円滑な相続のためには「遺言書」の作成が欠かせない。遺言書には本人自筆の「自筆証書遺言」と、公証役場の公証人が立ち会いの上で作成する「公正証書遺言」がある。
50代男性K氏の父親は、「何度でも書き直せて手軽だから」という理由で自筆の遺言書を残した。ところが死後、この遺言書が無効になってしまったという。理由は「遺言書の書式不備」だった。
「遺言書の訂正箇所に二重線を引いて上から訂正印が押されていました。ところがこの訂正が認められなかったのです。急きょ相続人全員を集めて遺産分割協議をしなくてはならず、大変な労力がかかりました」(K氏)
あさひ相続手続相談所代表で司法書士の旭祐樹氏が解説する。
「自筆証書遺言の場合、自筆で全文を書くことや『日付』『署名』の記入、『押印』が必要なことはほとんどの方が知っているのですが、訂正の仕方が意外と知られていない。ここを間違えて無効になるケースが多いんです。
一般的な書類のように『二重線プラス訂正印』では済まず、それに加えて文章の最後に『○条の○字削除○字追加』という訂正箇所の指定と署名(図参照)がないと訂正が認められません」
2020年7月にスタートした法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の利用や公正証書遺言の場合、ケアレスミスを注意してくれるという。