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《暴落相場》何もできずに「株価は回復する」という専門家の意見を探して納得する投資家心理 そもそも専門家の意見は正しいのか

株式を売却して金を買う投資戦略にも“心理的ハードル”

 株価が急落する中で、金価格が上昇している。金先物(COMEX)の値動きをみると、8月2日に一旦、1トロイオンス当たり2500ドルを超え、過去最高値を更新した。その後少し値を戻してはいるが8月5日現在、依然として高値圏でのもみ合いが続いている。上昇の要因としては、中国をはじめとした非米同盟国などによる金需要の拡大、中東情勢の緊迫化などに加え、米国の景気悪化懸念やそれに伴う金利低下見通しの高まりなどが挙げられようが、こうした上昇要因の多くがグローバルで株価が下落している要因と重なる。

 株価と金(ゴールド)価格が負の相関関係にあるのなら、バブル崩壊後のように長期にわたり株価が下がり続けるかもしれないと心配でならない投資家は、リスクをヘッジするために株式の一部を売却して金(ゴールド)関連の金融商品を買っておくといった戦略を検討する価値はあるかもしれない。国際社会は大きな変革期を迎えており、今後更に不安定化するかもしれないと考えるならば、なおさらだ。

 もっとも、こうした投資行動には大きな心理的ハードルがある。もし株を売った後、その株が上がってしまった時の精神的な痛みは大きい。売った株が上がっただけでなく、買った金関連商品が下がったとなれば、ダブルのショックとなりその痛みは耐え難い。

 一方、株を売った後、その株が更に下がれば、自分の決断が正しかったと安堵する。さらに、買った金関連商品が上がれば十分うれしいだろう。ただ、こうした安堵、嬉しさといった気持ちの強さよりも、それとは真逆となった場合の心の痛みの強さの方が大きいと感じてしまう。結局、場合分けしてそれぞれの発生確率を均等だと仮定してしまえば、心の感じ方の期待値はマイナスになってしまう。ならば何もせずに株価が再び上昇するのを待つことが一番だと信じ、「株価は底打ちして戻る」と語る専門家たちの意見を探すことで、自分を納得させることになる。

 経験を積み、よく訓練された投資上級者であっても、こうした心理的問題を克服し、徹底して合理的な判断を下すのは簡単ではない。相場にもよるが、残念なことに株式投資で成功する投資家は全体のごく一部に過ぎない。この現実は、ほとんどの投資家が頻繁に非合理的な決断をしてしまい、その結果、合理的な決断ができるごくわずかな“非人間的な投資家”だけが勝ち残るということを意味する。

 まずは自分が思っているほどには専門家の予想は当たらないといった前提を基礎として、長期投資を言い訳にせず、リスクを分散し、損切の水準などポジションを取る前に自ら決めたルールを厳守し、失敗を恐れず素早い決断を心掛けるところから始めてみてはどうだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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