中国では、鬼節(盂蘭盆、旧暦7月15日、今年は8月18日)を前に、何とも気味の悪い事件が多発しており、ネット上で大きな話題を呼んでいる。
複数の中国メディア(澎湃新聞、金融界など)が8月8日に報じたところによれば、移植用の同種骨を生産する山西奥瑞生物材料有限公司は、2015年から2023年にかけて斎場や医療機関から遺体やその一部を違法に調達し、処理した疑いがあるとして、窃盗、侮辱、故意棄損などの罪で山西太原市公安局から起訴された。
同種骨とは、骨腫瘍、外傷、壊死などによって失われた骨を代替する目的で使用される人体の骨を指す。日本では自身の身体の別の骨を使うか、人工骨を使うケースがほとんどのようだが、中国においては人工骨の普及が遅れており、同種骨を使用するケースが多いという。
具体的な手口としては、同社や、同社の関係者が出資する桂林、雲南、重慶、貴州、四川などの斎場から、遺族の承諾を得ることなく無断で荼毘に付す直前の遺体を解体し、一部の骨を持ち去るとか、取引のある青島、桂林などの医療機関と共謀し、献体の一部を違法に入手するとかいった方法で原材料を調達していたそうだ。
2015年から2023年までの同社の累積営業収入は3億8000万元(77億9000万円、1元=20.5円で計算)。この多くの部分が違法に調達された同種骨の売上とみられ、公安局は半製品を含む人体骨格原材料を18トン余り、製品3万4077個を押収した。同社は民営企業だが、株主で経営に携わる者が2名いる。これらの人物を含め75名が容疑者として挙げられている。
中国社会全体としては、死者を大切にする方々の方が圧倒的に多いようだ。埋葬方法についてだが、イスラム教徒は宗教上の理由で火葬を極端に嫌がるため、土葬が許されている。人口にして全体の9割以上を占める漢民族については、大都市を中心に法律によって火葬が定められているが、農村地域では、家族が歴史的に使用権を有する土地があることを前提に、住民の強い希望がある場合にはその土地に土葬することが認められている。
年配かつ、農村地区の住民を中心に死後の身体を傷つけることに強い抵抗を感じる人々が多く存在するため、国家全体として、骨、角膜が不足する。さらに、同様な理由から、脳死状態で摘出されることの多い腎臓、肝臓などの生体臓器の提供者も不足する。供給が少なければ価格は上昇する。提供者側の統計をみると、多くが貧困地域からといった物悲しい現状がある。