母親の腎臓、肝臓が摘出されたのは、実は事件当日の救急車の中であり、しかもこの救急車は車内で臓器の摘出ができるように改造された特殊な車であった。主治医含め6人が容疑者であったが、この内主治医以外は南京の医院の関係者であった。
組織ぐるみで犯罪が行われていたようだ。事件発生から逮捕に至るまで、時間がかかっており、中央が介入してようやく解決に至っている。これは特異な例というよりも、氷山の一角であるかもしれない。
事件がマスコミで広く報道されたのは今年7月31日以降である。前述の事件も合わせ、ネット上では、医療関係者の不道徳を批判する声が日増しに高まっている。
中国人社会の生死観には大きな振れ幅があるが、生死観に限らず、あらゆる面で中国人社会は日本人の想像を超えた振れ幅があると感じる。本土に住む中国人は平均値として自己の利益への執着が強いように思うが、そのことよりも、あらゆるモラルを超えて極端に強欲な人々が一定数存在してしまうことの方が問題をややこしくしている。とにかく、代表となる一点を切り取って“これが中国だ”と説明するのが極めて難しい国である。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。