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【入試部長インタビュー】人気上昇中の東洋大学が「学力テスト型推薦入試」を導入 大学が考える「勉強をしなくても推薦入試で入れる」という発想への危惧

――「一般選抜より総合型選抜の学生の方が入学後、成績優秀」と公にコメントしている大学もありますが。

「東洋大学の場合、総合型選抜でも優秀な学生は入ってきますが、入学後の成績のバラツキは大きいです。総体的には一般選抜の学生の方が入学後の成績が伸びています。経済学部では『英語・国語・数学の3教科入試』や『数学必須の4・5教科入試』などを導入しており、今、経済学部の入学者の7割以上が数学受験で入学をしてきます。

 2025年度入試からは文系の全学部で数学必須入試を実施しますし、また、多教科入試も拡大しています。このように東洋大学の入試は一般選抜を中心に学力(知識・技能)重視で展開しており、2024年度入試の一般選抜の割合は61.6%です。このような入試で入学してきた学生たちは入学後もしっかりと勉強し、成績もよく、それが就職の好調にもつながっています。ですから、年内入試を増やすとしても学力重視の試験をやりたいと考えました」

「学習の大切さを理解してほしい」と期待

――東洋大学は推薦入試でも基礎学力を重視していこうという試みでもあるんですね。国は推薦入試を増やしていこうという方針ですし、また、大学も学生確保のために年内入試を増やしたいと考えるトレンドだと思いますが。

「私立大学全体の傾向で見ると、推薦入試は本来、一般選抜では測れない能力を持つ受験生にもチャンスを与えるものですが、実際にはそうではなくなっています。受験生が『早く進学先を決めてしまいたい』と考えていたり、保護者も『早くに安心したい。正月は受験生の親として過ごしたくない』と願ったりすることが増え、大学側も早い時期に入学者を確保するためのハードルの低い推薦入試を行うことも目立つようになってきました。しかし、大学入学後の学びには英語や数学、国語などの教科・科目の基礎学力が必要です。

 たとえば、数学が身についてないと経済学は学べません。東洋大学が基礎学力テスト型の推薦入試をはじめることで、受験生がもう少し教科・科目の学習の大切さを理解してくれたらという期待もあります。12月1日が入試日ですから、その日までは2教科の学習でもいいから机に向かって努力してもらいたいですね。私は高校の先生方とも交流がありますが、彼らも生徒に基礎学力をつけさせたいと願っています。ちゃんと授業をやって、宿題も出し、勉強してもらいたいんですが、それを生徒や保護者が望んでいないからできなくなっているケースも増えています。『勉強をしなくても推薦入試で大学に入れるんだからいいでしょ』という発想の受験生が増えているのではないかと危惧しています」

 今回は東洋大学が始める「学力のみで合否を決める推薦入試」について、なぜ始めるかについて聞いた。次回は大学受験の現状と、他の大学の動向に言及しよう。

第3回に続く第1回から読む

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。【Xアカウント】@sugiyu170

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