2024年7月の東京都知事選挙は、現在の日本の“歪み”を象徴する一面を持っていた。立候補者数が過去最多の56人にのぼり、選挙ポスターの掲示板の枠が足りなくなるという“異常事態”も発生したが、これは例外中の例外と言える。地方の議会選挙の場合、立候補者が少なく、「無投票当選」や「定員割れ」が増えてきているのが現実だ。地方選挙では今、何が起こっているのか──。
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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日本崩壊の予兆は、地方議員のなり手不足からも見てとれる。
地方自治は二元代表制であり、独任制の首長と住民の多様性を反映させる議会からなる。もし、立候補者が議会の定足数を満たさない事態となれば議会は成り立たず、有権者自らが予算案などを直接審議しなければならなくなり、地方行政は大きな混乱を来す。
人口減少で多くの市町村が“消滅”を危惧される中、こうした事態は非現実的な話ではない。すでに地方議会選挙における無投票当選者が増えているのだ。
総務省の「第33次地方制度調査会」によれば、2019年の統一地方選において無投票当選があったのは482選挙区(全体の26.9%)に及ぶ。当選者は1816人(同12.1%)で、とりわけ都道府県議会と町村議会で急増傾向が目立つ。それぞれ26.9%、23.3%で、いずれも過去最高を記録した。8自治体では立候補者数が定数割れした。
都道府県議選(2019年に統一選を実施しなかった都道府県は直近の統一選)で無投票選挙区を比較すると、香川県の69.2%が突出している。岐阜県(61.5%)と広島県(60.9%)も6割台だ。一方、東京都は無投票の選挙区はなく、沖縄県は7.7%にとどまる。大阪府(15.1%)、鳥取県(22.2%)なども低水準で、地域差が大きい。