しかし、使用契約が終了すると借主には原状回復義務が生じますので、使用していたお墓の区画にある墓石などの施設を撤去して、更地にしてお寺に返すことが求められます。
そのほか、墓地特有の問題があります。お墓の中には遺骨が埋蔵されていますが、更地にするため遺骨を持ち出さなくてはなりません。埋蔵された遺骨を新しいお墓に移すことは、墓地埋葬法の定める「改葬」にあたり、市町村長の許可がないとできません。
許可を受けるにあたっては、墓地経営者の埋蔵証明書の提出が求められますので、お寺の協力が必要です。具体的な手続きについてはお寺や役所に相談してください。
次に、お墓を移さないで、墓守を弟夫婦に継いでもらう場合ですが、墓は祭祀財産という特別な財産で、祭祀の主宰者が継承する財産です。弟さんにこれを引き継いでもらう場合、墓地の使用は墓地経営者との契約になりますから、使用者の地位の承継になりますが、お寺に認めてもらわなければなりません。
この点、お寺の墓地はお寺の宗教活動という一面をもっています。お寺の信者として檀家がお墓を置いて、お寺の宗旨を信仰し、お寺を護持する関係にあります。ですから、弟夫妻がお寺の承諾を得て墓守を引き継ぐためには、檀家になることが条件になると思います。弟さんと相談してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※女性セブン2024年9月5日号