田代尚機のチャイナ・リサーチ

南海トラフ地震臨時情報や対日感情の悪化がインバウンド消費にどう影響するか? 中国での受け止められ方

南海トラフ地震臨時情報を受けて「遊泳禁止」の張り紙が出された神奈川県平塚市の海水浴場(時事通信フォト)

南海トラフ地震臨時情報を受けて「遊泳禁止」の張り紙が出された神奈川県平塚市の海水浴場(時事通信フォト)

南海トラフ地震臨時情報で航空券払い戻しをした顧客は少ない

 もっとも、最近、こうした好調に水を差すかもしれない悪材料が幾つか出てきた。

 宮崎県で8月8日16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生、気象庁は南海トラフ巨大地震発生の可能性が平時と比べ相対的に高まっているとの見方から19時15分に「南海トラフ地震臨時情報」を発表した。

 国内観光地では各地でホテルの予約キャンセルが相次ぐなどその悪影響が数多く報道されており、NRIは8月13日、この臨時情報によって、「個人消費の顕著な抑制傾向が、3か月程度続き、その際の落ち込みが東日本大震災の前年比-3.4%になると仮定」した場合、旅行・観光消費は1862億円減少するといった試算を発表している。インバウンド消費についても、同程度に減少すると仮定すれば592億円の需要減になると予想している。

 臨時情報については、中国の各マスコミも大きく報じている。南海トラフ地震が発生した場合、東京から九州、沖縄にかけて、広範に渡る太平洋沿岸において、強烈な地震、津波に襲われる可能性があり、最悪の試算では死者は32万人、家屋の倒壊は238万件に及ぶとする日本での報道をそのまま伝えている。

 中国からの旅行者の減少が懸念されるところだ。複数の本土マスコミ情報(8月14日付、21世紀経済報道など)をみてみよう。同サイトの記者がCtrip、飛猪などのチケット販売プラットフォームなどで確認した範囲では1週間以内における東京から広州、北京、上海への直行便の価格は上昇しており、一部の便では1万元(20万5000円、1元=20.5円で計算)を超えるようなチケットも出ているようだ。

 また、本土から日本に向かう航空券についてだが、8月12日時点で中国国際航空、東方国際航空の日本便チケットのキャンセルについては全額払い戻しを行っているが、実際に払い戻しを行った顧客は少ないようだ。

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