建て替え負担額の平均は2000万円近く
社会全体の高齢化に伴い、居住者の年齢も上がってきている。
内閣府の「高齢社会対策総合調査」(2023年度)によれば、持ち家の分譲マンションに住む高齢者は8.3%である。国交省の調査によれば、世帯主が70歳以上の割合は「築40年以上」では48%、「築30年~40年未満」が44%と半数近くだ。「築20年~30年未満」も23%である。
高齢居住者が増えるにつれて、近年は住み慣れたマンションを終の棲家にしたいという永住意識も高まっている。70歳代が79.2%、80歳以上は79.3%だ。だが、こうした高齢住民の永住志向は、老朽化したマンションの建て替えの大きな阻害要因となっている。
近年、床面積を新たに生み出せる容積率が縮小傾向にあることに加え、建築資材の高騰で1世帯あたりの建て替え負担額は上昇している。国交省によれば2017~2021年の平均額は1941万円だ。
一方で住民側といえば、デフレ経済の長期化の影響で賃金上昇が抑え込まれ、十分な老後資金を貯められないまま定年退職したという人が増加傾向にある。年金収入が中心の暮らしになってから2000万円近い資金を求められても、簡単に「イエス」とはならないだろう。
こうして、高齢居住者が多いマンションほど建て替えの合意は得られにくくなっていく。区分所有者が多いタワーマンションはなおさらハードルが高くなりそうだ。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。