一部の商品では外国に“買い負け”する場面も
ウクライナ侵略の影響で即座に日本の食料輸入が滞ったわけではないが、不安定化した穀物相場の影響は、歴史的な円安が追い打ちをかけたこともあり、日本でも食料品の相次ぐ値上げとなって表れている。商品によっては短期間に複数回の値上がりとなった。
そうでなくても世界人口は爆発的な増加を続けており、各国の食料争奪戦は激化している。一方、人口減少が続く日本の購買力は低下してきており、すでに一部の商品では外国に“買い負け”する場面が見られるようになった。
このため、「このまま日本経済が衰退して行ったならば、遠くない将来、日本は思うように輸入できなくなるのではないか」といった見方が広がっている。
政府も危機感を募らせている。ロシアのウクライナ侵略で食料輸入に依存する日本の脆弱性が浮き彫りになったことも理由だが、そうした短期的要素だけではなく、食料が各国に行き渡らない状況の拡大への懸念だ。
強い経済成長が期待できない人口減少社会においては、国民の飢餓を心配しなければならなくなるかもしれない。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。