AIインフルエンサーが抱える倫理的な課題
世界中で急増しているAIインフルエンサーの市場規模は、今後ますます拡大することが予想されている。ただし、「倫理的な課題も山積している」と語るのは、都内の私立大学でメディア技術について研究している、大学教員の男性・Bさん(40代)だ。
「海外では、AIインフルエンサーを一般的にバーチャルインフルエンサーと呼びます。世界のバーチャルインフルエンサー市場規模を調査した報告書によれば、2022年に33億ドルだったものが、2030年には世界で378億ドル規模にまで成長すると予想されています(※KBV Research『世界のバーチャルインフルエンサー市場規模、シェア、動向分析レポート』より)。
しかし、倫理的な問題点も多い。まず指摘されるのは、実在する人間とAI生成インフルエンサーを、ユーザーが簡単に区別することが困難なことです。“リアルな人間だと信じて投資したユーザー”にとって、後からAIであったと発覚した際には裏切られたという感覚に陥るケースもあるでしょう。
また生身の人間ではないことをいいことに、過激なポルノが生まれる可能性もあります。実際、現在のAI生成インフルエンサーは、圧倒的に『女性』が非常に多く、ジェンダー格差も見られます。
原型を留めないほどに加工されたインフルエンサーの写真や、さらに人間離れした美しい容姿のAI画像や動画がSNS上に氾濫すれば、それが若年層の容姿へのコンプレックスを刺激したり、ルッキズムを加速させる恐れもある。AIインフルエンサーが簡単に作れてしまう中で、今後それがどのような影響を及ぼすのかは注視していく必要があります」(Bさん)
急速に広まるAIインフルエンサー。日頃チェックしているアカウントの美男美女も、じつはAI生成されたものかもしれない──。ユーザーの消費行動だけでなく、様々な影響が懸念される問題だけに、議論の深化が求められている。