ギャーッ、想像するだけで押しつぶされそうになる
というのも、私は子供の頃から忘れ物・落とし物が多くて、散々悲しい思いをしてきたの。なくし物をなくするには、物の置き場を決めること。わかってる。でもそれができないんだって。頭でわかっていても、やることは行き当たりばったり。
だから、家から数分、または駅まで歩いたところで、スマホ、スマホ、スマホ。別の日は鍵、鍵、鍵。捜し物はバッグの底をひっくり返しても見当たらない! これまでの忘れ物の数々が記憶の底から浮かび上がってきて、「ああ、またやっちゃった」とパニックになるの。
そして慌てて引き返して家のドアを開けたところで、ん? バッグに突っ込んだ手に当たるこれは何だ?
だから、新千歳空港のはさみ紛失事件がとても他人事じゃないんだって。
「はさみ、どこかに置き忘れたかも」と慌てふためいた、私とよく似た性分の従業員が空港内にあふれたロビー難民を見たら……。ニュースで「出発・到着合わせて36便が欠航し、4万人以上に影響が出ました」と流れたら……。ギャーッ、想像するだけで押しつぶされそうになるわ。
幸い、これを報じたネットニュースのコメント欄には、「緊張感がなさすぎる」というお叱りの中に、「人為的ミス。それを隠さなかったことをよしとします」という意見がけっこう交じっていたのよね。
年をとると失敗した人のことを責め切れなくなるのは、忘れようにも忘れられない自分のヤラカシがあるから? もしそうだとしたら超高齢社会も悪いことばかりじゃないのかもね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年9月12日号