あの世にお金は持って行けない
政府も人生100年時代に備えた投資・貯蓄を推奨し、新NISAがスタート。4月にはiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢を70歳未満に拡大する方針を発表し、「増やせ、貯めろ」のムードにますます拍車がかかっている。
「金融機関は老後の不安を煽り、資産防衛の必要性ばかり訴えてきます。しかし、投資も貯蓄も、“いつかお金を使う”ための手段でしかありません。では、いつそのお金を使えばいいのか。これが分からないから、多くの人は死ぬまで貯蓄をしてしまうのです。
私が独自に計算したところ、日本人の個人資産総額約3200兆円のうち、2000兆円ほどを60歳以上が保有しており、これが消費に回らない。いくらお金を貯めてもあの世にお金を持って行くことはできません。重要なのは、漫然とした投資や貯蓄をいつまでも続けることではなく、“正しくお金を取り崩す計画”を立てることです」(野尻氏)
貯めるよりも、使うことのほうが難しい老後資産。これを効果的に取り崩すためには、「寿命からの逆算が必要」と野尻氏は指摘する。
「何も考えずに散財すれば老後資金がショートするリスクがあります。超高齢社会の現代では、100歳まで生きると想定して長期的な計画を立て、収入と支出のバランスを整えて資産寿命をコントロールしていくことが重要。そうすることでその後の人生の安心につながり、過剰な貯蓄をせずとも豊かな老後を送ることができます」
※週刊ポスト2024年9月13日号