もっとも名刺を返しても、名刺に記載された情報自体は記憶に残ります。会社の営業秘密の漏洩や無断使用は『不正競争防止法』違反になりますが、名刺情報自体は通常の場合、営業秘密ではなく、自分の情報として使うことができます。ただ、名刺の個人情報をPCに入力したり、カード化して検索できるようにすると、個人のデータベースになってしまいます。
退職後に始める事業や再就職先での仕事に、個人のデータベースを使用した場合は『個人情報保護法』の適用を受けます。元の会社の業務で取得した個人情報を別の事業目的で使えば、個人情報の利用目的が違ってくるからです。
そこで個人情報の本人に、挨拶状などで新たな利用目的の通知が必要になります。その場合、変更に同意しない個人から利用停止を求められることもあるでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年9月13日号