河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

“令和の米騒動”に拍車をかける「買い物難民」の増加 日本で食料品の購入が困難な「食料品アクセス困難人口」は900万人超

“令和の米騒動”に拍車をかける「買い物難民」の現状とは(写真は8月下旬。AFP=時事)

“令和の米騒動”に拍車をかける「買い物難民」の現状とは(写真は8月下旬。AFP=時事)

“令和の米騒動”と騒がれた米不足は、9月にも収まると見込まれている。しかし、当初予想されていた以上に“騒動”が拡大したのは、もともと「買い物難民」と呼ばれるような食料品の購入が困難になっている消費者が増えていることとも無縁ではないだろう。令和の日本において「買い物難民」はなぜ拡大しているのか?

 人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。

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「日本崩壊」の予兆で最も見逃すことのできないのは「食」への影響だ。しかし、それは単に農業や食料安全保障の話で終わらない。

 食料品が消費者の手元に届かないという状況が広がりを見せている。「買い物難民」の増加だ。

 農林水産省の農林水産政策研究所が、店舗まで500メートル以上かつ自動車利用困難な65歳以上の高齢者を「食料品アクセス困難人口」と定義し、2020年国勢調査などのデータを基に分析した結果、該当者は904万3000人にのぼった。900万人を突破したのは初めてだ。

 高齢者人口に占める割合は25.6%であった。高齢者の4人に1人が、食料品の購入が困難な「買い物難民」という異常な社会がすでに到来しているのである。

 前回の推計(2015年)とは集計方法が一部異なるためデータに連続性はないのだが、単純に比較するならば9.7%増だ。社人研の将来人口推計は高齢者数のピークを2043年としており、買い物難民は今後も拡大を続けるものとみられる。

“難民”増加の背景にある1人暮らし高齢者の増加

 買い物難民がここまで拡大したのには、いくつかの要因がある。

 背景の1つとして挙げられるのは、75歳以上が565万8000人(同人口の31.0%)と、買い物難民全体の62.6%を占めていることである。

 70代後半や80代になると、大半の人は現役時代のような収入を得られなくなり、維持経費が高いマイカーを手放す人が増える。あるいは、加齢に伴う判断力や運動機能の低下で運転そのものが難しくなり、免許証を自主返納する人も多い。

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