家計

「悠々自適な老後のつもりが…」高齢者の買い物環境が悪化の一途、食料を求めての“サバイバル戦”を余儀なくされる

食料品アクセス困難人口の6割は75歳以上

食料品アクセス困難人口の6割は75歳以上

年齢に関係なく「買い物弱者」が増えていく

 買い物難民とは、高齢化で移動困難な人が増えるという「消費者側の変化」と、国内マーケットが縮小し小売店舗の経営が困難になるという「売り手側の変化」という2つの構造的課題が重なって起きているということであるが、これを単に高齢者の問題として片づけてはならない。

 人口減少が背景にある以上、いずれ若い世代にとっても深刻な状況が広がる。国内マーケットは縮小を続けており、各地で小売業の淘汰が始まっている。

 すでに自宅からかなり離れた隣接市町村の大型ショッピングセンターに買い物に出掛けている人は少なくないが、今後は、ちょっとした品物が不足しただけで遠方まで買いに行かなければならなくなる可能性が大きくなることだろう。年齢に関係なく、自宅近くに買う場所がないという「買い物弱者」が増えそうだ。

 買い物難民の増加を受けて、多くの地方自治体では対策を講じている。食料品の移動販売への補助や、スーパーマーケットやホームセンターなどを回る無料の送迎バスを走らせる事業を行っているところもあるが、人手不足で運転手の確保は難しい。利用者が少なくて採算が取れずに事業が打ち切られることも少なくない。

 すべての食材をコストが高いネット通販で購入するのも家計指数が大きくなりすぎて現実的ではない。そもそも、これらの取り組みは、内需の縮小で店舗経営が難しくなるという根源的な課題を解決し得るものではなく、限界がある。

 政府は、世界人口の爆発的な増加に伴う食料不足に備えて食料安全保障の強化を急いでいるが、食料を安定確保したとしても国民の手元にスムーズに届かないのでは意味がない。人口減少社会における食料安全保障は、もっと広義にとらえて対策を考える必要がある。

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。

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