農林水産政策研究所が、店舗まで500メートル以上かつ自動車利用困難な65歳以上の高齢者を「食料品アクセス困難人口」と定義し、2020年国勢調査などのデータを基に分析した結果、該当者は904万3000人にのぼった。高齢者人口に占める割合は25.6%で、高齢者の4人に1人が、食料品の購入が困難な「買い物難民」となっている。
買い物難民は「過疎地の課題」ではなく都市部に集中しており、とくに「東京圏の難題」となりつつある。人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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「買い物難民」をエリアでとらえると、交通が不便な「過疎地の課題」と考える人が少なくないだろう。
確かに、農林水産政策研究所の分析結果で各都道府県の高齢者に占める買い物難民の割合を見ると、離島が多い長崎県の41.0%を筆頭に、青森県37.1%、鹿児島県34.0%などが続いている。
しかしながら、実数で比較すると、これとは全く異なる順位となる。
買い物難民の人数が最も多いのは神奈川県の60万8000人である。次いで大阪府53万5000人、東京都53万1000人、愛知県50万人など三大都市圏に位置する都府県が上位に並ぶ。これに対し、一番少ない鳥取県は4万3000人に過ぎない。
三大都市圏と地方圏を比較すると、買い物難民の人数は414万1000人と490万2000人と、大差がついているわけではない。買い物難民の45.8%は三大都市圏なのだ。