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《独自》ユニクロ柳井氏「日本人は滅びる」発言に元ネスレ日本CEOが賛同 「“世界の中の日本”の立ち位置を正確に表わしている」バブル崩壊後の日本企業の失敗とは

ZOZO創業者の前澤友作氏(時事通信フォト)

ZOZO創業者の前澤友作氏(時事通信フォト)

バブル崩壊までは「労働者が優秀だった」

 日テレのインタビューで柳井氏は、1ドル80円だった時代と比べて円の価値が半減し、給与水準が30年間ほぼ上がってこなかった日本は、「世界基準で考えたら年収200万円台の国」と発言した。

「日本の経済がこれだけ縮小して日本人の給料が安いのは、企業に稼ぐ力がないからです。自国の中だけの競争では市場が広がらないし、商品やサービスの平均的レベルが高いので、その中で優位性を求めてもなかなか稼げません。実際、スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)が発表した世界競争力ランキング2024で、日本は67の国・地域のうち38位でした。バブル期の日本は1位だったので、凋落ぶりは明らかです」

 バブル期の日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されたが、バブルが弾けてから30年以上もの間、日本経済が低迷を続ける理由は何か。「バブル期は経営者がプロだったのではなく、労働力が優秀でした」と高岡氏は語る。

「戦後の日本経済復興の半世紀でバブルが弾けるまでは、日本は先進諸国に追い付けの新興国。ただ、当時7500万人の人口であった日本の労働人口のほとんどが読み書きできたのは、非常に稀でした。また戦前・戦中の『産めよ殖やせよ』の時代で子供の数が多かったこともあり、戦後の日本の人口は50年間で約5000万人も増えました。質の良い低コストの労働力で、欧米諸国が創ったイノベーションを模倣して、さらに良い商品を作る。人口が増える国内で成長し、かつ海外に低価格で輸出できた。戦後バブルが弾けるまでの半世紀、日本経済はこうした低コストで質の良い労働力に助けられていたのです。

 バブル後に人口が減少し始めたら、本来はそれまでの“勝利の方程式”を捨てなければならなかった。コストが安く質の高い労働力に頼るのではなく、マーケティングを学んだプロの経営者がイノベーションを起こしたり、少数の人間が効率的に高品質の製品を作れるように労働生産性を高めたりする必要がありましたが、日本の経営者はその努力を怠りました。その結果、『失われた30年』が延々と続いたわけです」

■後編記事:《ユニクロ柳井氏「日本人は滅びる」論争》元ネスレ日本CEO高岡氏が力説「滅びないために税金と内部留保の使い方を変えるべき」「自信を持つ前に謙虚になれ」

【プロフィール】
高岡浩三(たかおか・こうぞう)/1960年生まれ。1983年、神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。2010年よりネスレ日本代表取締役社長兼CEO。2020年3月、同社を退社。著書に『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)、共著書に『逆算力』(日経BP社)がある。

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