相続税を軽減させるために生前贈与を選択する人もいる。しかし、やり方を間違えると、認められないケースもある。昨年父親を亡くした70代男性Aさんは、こう話す。
「『生前贈与しているから相続税対策は大丈夫』と生前に語っていた父でしたが、蓋を開けてみると生前贈与が認められなかったんです……」
父親はAさんの子供2人の口座に暦年贈与(年間110万円までの贈与は非課税となる)として毎年110万円ずつ送っていた。ところが没後、相続手続きを進めていると、税務署から「名義預金」(口座の名義人と実際の所有者が異なる預金)だと指摘され、暦年贈与が認められずに相続財産に戻されてしまった。結果、相続税が生じてしまったという。
相続税対策の王道である暦年贈与だが、税理士・社会保険労務士の佐藤正明氏はこう話す。
「制度を正しく理解せず、Aさんのような落とし穴に陥る人が多い印象です。
贈与は渡す人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の双方の合意で成り立ちますが、通帳や印鑑が子や孫の手元になく、自由にそのお金を使えないといったケースでは贈与の合意がないと判断されやすいのです」
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