9月27日に投開票される自民党総裁選は、史上最多の9人が立候補し、大混戦の様相を呈している。自民党が打ち出す“刷新感”競争に誤魔化されないよう、国民は候補者たちをどう見定めたらよいのか。小泉純一郎内閣や安倍晋三内閣を官邸スタッフとして支えた経験を持つ元財務官僚の高橋洋一氏(嘉悦大学教授)が「最強官庁・財務省との距離感」をヒントに語る。
「年収の壁」撤廃は財務省が温めてきた策
――出馬会見で小泉進次郎氏は、父で元首相の純一郎氏を意識してか「改革」のイメージを全面に打ち出していました。
「陣営スタッフが周到にお膳立てしているように見受けました。未熟さを問う挑発的な質問にも『足りないところを補ってくれる、最高のチームを作ります』とほぼ完璧な切り返しでしたね」
――そんな小泉氏を舞台裏で支えているブレーンは誰でしょう?
「政策面では財務省が深く関わっているのがよくわかります。出馬会見で小泉氏が『年収106万円の壁撤廃に向けて働く人すべてに原則厚生年金を適用する』と打ち出した時には、“あれ?”と違和感を覚えた。これは財務省が以前から温めてきた策だったからです。そもそもこの『壁』の問題は、月額給料が8万8000円(年換算で106万円)を超えた労働者が厚生年金に入らざるを得なくなるので、それ以上働くのを控えてしまう、というもの。
その対応として年収の壁を取っ払う……ここまではいいのですが、そのために、全ての人に厚生年金に入ってもらうというとなると、これまで保険料を払わなくて済んだ、月額給料8万8000円以下の人にも負担が生じることになる。しかも、厚生年金ですから労使折半です」
――負担増の説明は小泉氏からはありませんでした。
「彼がどこまで理解しているかはわかりませんが、財務省は自分たちにとって切り札になるような案を預けるぐらい、小泉氏を手厚くサポートしていると見ていい」