小林鷹之氏は積極財政派なのか、緊縮財政派なのか
――財務省・日銀とは違う考え方の政治家とは?
「高市早苗氏は出馬会見で財政状況について問われた際、『国の債務額をグロスで見れば厳しいけれど、ネットで見ればG7の上から2番目に良い』とパッと答えています。高市氏が述べた『ネットで見る』とは、政府の総(グロス)債務だけで財政を見るのではなく、中央銀行を含めた政府機関の金融資産などを差し引いた正味の純債務で見る考え方です。
『日本の財政状況は実は財務省が主張するほど悪くない』というポイントをしっかり抑えていると、政策の自由度が高まって緊縮路線とは全く違う政策像を描ける。逆にグロス債務だけを見て、『政府の財政は大変だ』という考え方になってしまうと、財務省の緊縮路線に乗るしかない。きちんとネットで政府債務を捉えているのは、候補者の中で高市氏1人です」
――防衛・少子化対策のための増税の決定に関わりながら、「増税ゼロ」を打ち出した茂木敏充・幹事長と財務省の関係は?
「古い財務省の発想を転換する、という意味では、興味深い動きですね」
――財務省出身の小林鷹之・前経済安全保障担当相は、「経済は財政に優先する」と、積極財政論者であることを強調していました。
「経済が財政に優先するのはどんな政権でも当たり前で、小林氏のこの発言を見ると、積極財政とまではいえないが、緊縮財政でもないという立ち位置でしょうか。ただ、立ち位置を考える上で見逃せないのは、当選4回以下の若手の積極財政派が集う『責任ある積極財政を推進する議員連盟』には加わっていないこと。何度も勧誘されながら、小林氏が断わったと聞いています。
その代わりに、財務省が裏で音頭をとっているとされる『令和国民会議(令和臨調)』の超党派会議の名簿には、小林氏の名前があります。私がこのことを指摘したことで、小林氏は随分怒っているそうですが、事実だから仕方ない。
ちなみに同じ財務省出身でも、加藤勝信・元官房長官の名前は、令和臨調の名簿にありません。もちろん財務省出身議員の名前があることは驚くことではないが、出身母体から距離を取るのは簡単なことではないのでしょう」
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【プロフィール】
高橋洋一(たかはし・よういち)/1955年東京都生まれ。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究学科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。1980年大蔵省(現・財務省)に入省、小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官し、『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞した。YouTube「高橋洋一チャンネル」で注目を集め、チャンネル登録者数は100万人を超える。
取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)