住まい・不動産

新築住宅の着工数は今後も減少していく 人口減少と世帯構成の変化がもたらす住宅市場の未来

世帯数の減少だけにとどまらない人口減少の影響

 今後の世帯構成を展望すると、新設住宅の着工戸数はさらに減り続けそうだ。

 社人研の推計によれば、世帯総数は2030年の5773万世帯でピークを迎えるが、一人暮らし世帯は2050年には44.3%にまで増える。一方で「夫婦と子ども世帯」は21.5%に減ると予測している。

 これを世帯数に置き換えると、2020年よりも増加するのは一人暮らし世帯だけである。2020年の2115万世帯から2036年には338万多い2453万世帯にまで増加する。その後は減少に転じ、2050年は2330万世帯と見込んでいる。これに対し、「夫婦と子ども世帯」は1401万世帯から1130万世帯に減少する見通しだ。

 人口減少の影響はこれにとどまらない。

 住宅を購入する場合、ローンを借りる人が大半だ。月々の返済額を考慮してできる限り手持ち金で頭金を多く支払い、借入額を少なくしようとするのが一般的である。年功序列型賃金が根強く残っている日本において、30~40代で十分な住宅資金を蓄えることはかなり難しい。

 そうでなくとも、国民負担率は上昇を続けている。最近は急激な物価上昇もあって賃金が上昇しても生活が苦しくなっている人が少なくない。建築材料費や建築作業員の賃金上昇、大都市のマンションなどへの投機マネーの流入の余波で住宅費が全体的に高騰しやすい状況ともなっている。

 こうした状況下で、頼りにしたいのが親からの金銭支援だが、それもままならないのが現実だろう。

後編に続く

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。

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