マイホームは人生の中でも一、二を争う高い買い物。一生に一度の買い物で失敗をしないためにはどうすればよいのか。さくら事務所会長の長嶋修氏がマンションにまつわる様々な「落とし穴」を実例とともにまとめた新刊『マンションバブル41の落とし穴』から、良質な中古マンションを選ぶためのポイントを解説する。
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マンション選びの希望として圧倒的に人気があるのは、新築や中古の築浅物件です。
新築の物件は、できたばかりなので建物の内側も外側もきれいですが、その分「新築プレミアム」と呼ばれる新築物件ならではの価格の上乗せがあり、割高です。新築プレミアムが剥がれた中古物件のほうが割安になるため、新築に並々ならぬこだわりがある人以外は、中古マンションを選んだほうがお得です。といっても、築浅であればあるほど割安感は薄れますし、なかには新築並みの価格水準に達している築浅物件もあります。
それでも「新築や築浅のほうが設備が良さそうだし、新しい建築技術で建てられているから安全そう」という固定観念は根強く、マイホームを求める大部分の人は新築か築浅物件を希望します。
ですが、必ずしも新築や築浅のほうが設備がよく、安心・安全とは限りません。
マンション価格が高騰するなか、販売価格を据え置いている新築分譲マンションは、従来の同価格帯のマンションよりも部屋が狭くなっていたり、内装のグレードが大幅にダウンしていたりします。いわゆるステルス値上げです。
そのため、長い年月にわたってさまざまなマンションを見てきたプロの目から見ると、「この価格で、こんなチープな内装・設備なの?」と驚かされるような物件もしばしば目にします。それに比べると、資材価格などが高騰する前に建てられた中古マンションのほうが、内装・設備とも充実しています。
また、新しいマンションのほうが安全と思われている理由の一つに「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」があります。品確法は一般消費者を欠陥住宅などのトラブルから守るための法律で、マンションでも戸建住宅でも新築から10年以内なら、基礎構造部分(構造耐力上主要な部分・雨水の侵入を防止する部分)の瑕疵(かし)について、売主が瑕疵担保責任を負うことを義務付けています。
品確法で守られていることは安心感につながりますが、実際には新築から10年以内に適切なアフター点検をしているマンションは、あまりありません。せっかく無償で修繕してもらえるのですから、それを活かす仕組みがあればいいのですが、そこまで考えている管理組合は少ないです。共用部の初期不良に気づかず10年経過し、後で気づいても無償で直してもらえず、修繕積立金で補修せざるを得なくなるような事例も見られます。
逆に、建って何十年も経過している物件でも、きちんと耐震補強工事が行われ、適切な長期修繕計画の下で維持修繕が行われていれば、一定の安全性は担保されています。
よって、新築して間もないために何の調査・点検も行われていない築5年のマンションと、定期的に調査・修繕を行い、健全性が担保されている築15年のマンションがあったとき、どちらがいいマンションなのかは簡単に判断できません。ただ、市場では前者のほうが「築浅」ということで、高い売値がつきがちです。