「中古」に対する消費者意識の変化に注目
こうした状況を少しでも食い止めるには、無計画に新築住宅を建て続けるという現行のビジネスモデルを改め、エリアを定めて中古住宅を活用することだ。
新設住宅の着工戸数が減少しているということは、裏を返せば中古住宅に対する消費者の意識が変わってきているということでもある。住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によれば、「融資区分別」(建て方別)で「中古住宅」の利用者割合は、2022年度は24.1%、2023年度は27.4%と伸び続けている。2013年度は13.9%だったのでほぼ倍増だ。
「2023年度フラット35利用者調査」を基にした内閣府の分析によれば、これまで新築住宅の購入割合が高かった「年収300万~600 万円」および「600万~1000万円」の層で、中古住宅の購入割合が10年前の2倍程度に上昇している。これまで中古住宅にさほど関心がなかった年収層の購入が伸びたことで、住宅取得者全体としても中古住宅取得割合が上向いたということである。
駅などに近い便利な場所でも空き家が目立つようになってきている。こうした既存の人口集積地で中古住宅を比較的安価に手に入れられるような政策を進めれば、郊外に新築物件を求めて都市が膨張を続けるという状況も変えられる。
住宅政策や都市開発に対する考え方を変えず、従来の発想で宅地を広げていったならば、全国に過疎地が広がり、住宅ストックが膨れ上がることとなる。
新設住宅の着工戸数が減少している現状は、住宅政策が転機にあることを示している。その“シグナル”を見誤ってはならない。
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【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。