「老朽マンション」の問題は深刻(イメージ)
超高齢社会・日本では、「マンションの老朽化」も進行し、築40年以上のマンションは大幅増が見込まれている。国交省の推計によれば、2032年末に2022年末比で約2.1倍にあたる約260万8000戸、2042年末は約3.5倍にあたる約445万戸に達するという。それに加えて、居住者の高齢化も並行して進むため、マンションが抱える「2つの老い」問題は、予想されている以上に深刻だ。実際問題として老朽マンションでは何が起きているのか?
人口減少問題の第一人者で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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高齢居住者が増えるにつれて、住み慣れたマンションを終の棲家にしたいという永住意識も高まっている。そうした永住志向が、老朽化したマンションの建て替えの大きな阻害要因となっている上、高齢住民の増加は、建て替えどころか大規模修繕も難しくしている。
快適な居住環境を維持するには適正な時期に修繕するマンションの長寿命化が欠かせないが、長期修繕計画を定めて修繕積立金を積み立てているマンションのうち、「不足していない」との回答は33.8%にとどまる。一定の条件を置いた国交省の試算によれば、「必要となる修繕積立金」の1世帯あたりの平均月額は、2021年度は2万1420円だ。2011年度の1万4210円と比べて5割ほど上昇している。
積立金が不足する要因としては、建設作業員の不足や資材の高騰に伴って想定以上にコストが上昇していることもあるが、十分な額を積み立てていないケースも目立つ。
マンション購入にあたっては住宅ローンの返済に加えて修繕積立金などを支払う人が大半であり、毎月の負担額は多額になりがちだ。毎月の支払額が大きくなると購入自体を諦める人も出てくる。こうした事態を避けようと、マンションの販売会社は修繕積立金を低く設定して買わせやすくする傾向がある。