お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。初回は新宿思い出横丁の名店から始めてみよう。【連載第1回】
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酒飲みは、たいてい、いつでも飲みたい。朝起きて、調子がいいと、朝から飲みたい。朝、不調なら、昼から飲みたい。夕方も、夜も、深夜も明け方も、飲みたいのである。
なぜかは知らぬ。
けれどもこれも、尽きることなき酒の道だ。日々の酒は、その修練の先に何か大きな悟りをもたらす修業にほかならない。だから飲む。
と、嘯きつつ街を歩けば、ああ、昼から飲めるスポットのなんと多いことよ。
人生100年時代と言われる。ありがたいか。冗談言っちゃいけない。私は今、61歳だ。100歳まで39年ある。その間、何をするというのか。体力の衰えは否めず、何もないところでつまずき、よく、咽る。かといって、若返る、という魔法にすがりたくもない。つまり、これから、日々確実に衰え、朽ちていくだけなのだ。
だからこそ、昼から飲んで将来不安をうっちゃらないと、やってられない。これは私だけの了見かもしれないが、ハメを外した、しばし、フワフワとしたいい心持ちになれる今を、大事にしたい。
そう、年取ってわかったのだ。昼酒は、今を生きる、ということである。
ということで今回から、「昼酒御免!」とひと言発して、ささっと飲む。ただそれだけのコラムを開陳してみたい。酒好きのみなさんにはよく知った店も登場するでしょうし、おお、そんなところもあったのかと、偉大なる発見に心躍ることもありやと思う。