スーパーで時折見かけるのが、本来あるべき棚とは違う場所に置かれている商品だ。もしも、冷凍や冷蔵の商品が常温の棚に置かれていた場合、商品を移動させた人に何らかのペナルティが課される可能性はないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
スーパーマーケットで購入しようとしていた冷凍や冷蔵の商品を、常温の売り場に戻してしまう人がいます。冷凍品などは溶けてしまい、売り物にならなくなるケースがあると店員から聞きました。故意かどうかはわかりませんが、このような行為は犯罪にならないのでしょうか。(神奈川県・54才・女性)
【回答】
冷凍・冷蔵保存すべき食品を常温状態に置いて商品価値を失わせると物を壊したことになりますから、刑法の器物損壊罪が問題になります。
それと同時に、スーパーの業務の正常な運営も妨げられます。スーパーが困るのを面白がって冷凍食品などをあるべき場所に戻さないと、いたずらで業務を妨害したものとして軽犯罪法違反になります。
さらに、スーパーの業務を妨害しようとして、大量の冷凍食品を常温の場所に放置するなどの妨害行為をした場合には、刑法の威力業務妨害罪に、見つかりにくいように常温部に隠したりすれば偽計業務妨害罪になる可能性があります。
しかし、刑事責任を問うためには、いずれも商品価値がなくなることをわかっていてわざと常温の場所に置くという認識が必要です。戻すことをうっかり忘れていたのであれば、物を壊したり店の業務を妨害したりするなどの故意がないため罪になりません。
また、近くに店員がいたために、冷蔵庫や冷凍庫に戻してくれると思っていたような場合も、損壊やいたずらをする意思がありませんから罪になりません。