もはや米ドルは覇権通貨ではない
ではドルを使わずに、どうするのでしょうか。
BRICSは現在、新通貨「The UNIT」の発行を計画中で、BRICS+ビジネス評議会「金融サービスおよび投資ワーキンググループ」ですでに議論されており、早ければ2025年にBRICS+の公式政策となる見込みです。BRICSが主に国家間決済用通貨として利用する新通貨「The UNIT」の通貨価値は、金40%、BRICS+通貨60%で価値を構成する半金本位通貨でペッグ制(固定相場制)。分散型台帳(ブロックチェーン)を採用し、ドルのようにどこかひとつの主体が使用・保有を制限できることがない非政治的通貨であるとしています。
このような状況を受けて米経済学者ジェフリー・サックス氏は次のように述べています。
「BRICSの経済は米国やその同盟国の経済よりも大きい。ワシントンでは一種のパニックが起きており、それは不安の神経症にまで高じている」
少なくとも、もうすでに米ドルは覇権通貨ではありません。米ドルが価値の源泉となる覇権通貨の地位を脅かされ、やがて追い越されようとしているのに、米ドルが今の水準であるのは、大きな市場の歪みであると私は考えています。
※長嶋修・著『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)より、一部抜粋して再構成
【プロフィール】
長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会初代理事長。国交省・経産省の様々な委員を歴任。YouTubeチャンネル『長嶋修の日本と世界の未来を読む』では不動産だけではなく、国内外の政治、経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。マスコミ掲載やテレビ出演、講演等実績多数。著作に『不動産格差』(日経新聞出版)、『バブル再び~日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)など。最新刊は『グレートリセット後の世界をどう生きるか~激変する金融、不動産市場』(小学館新書)。