円安基調が続いてきたかと思えば、乱高下をするドル円相場。そもそもドルの価値はどのような経緯で決められ、今後も世界の基軸通貨であり続けるのだろうか。不動産コンサルタント・長嶋修氏の新刊『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)から、基軸通貨としてのドルの歴史的な経緯とその終焉の可能性について解説する。
ドルは下落し続けている
お金の話は、その成り立ちをさかのぼればきりがないので、近年に限れば、現行金融システムは1944年、つまり80年ほど前のブレトンウッズ会議で決まっています。日本が第二次世界大戦の敗戦を迎える前年に、すでに金融システムの話し合いが行われていたことにも驚きますが、この時、次のような国際合意が取り決められました。
「ドルを世界の基軸通貨とする」
「ドルの裏付けとして、金(ゴールド)1オンス=35ドルとする」
要は、お金の価値をゴールドに紐づけることによってその価値を担保したわけです。一定のお金を持っていれば、いつでもゴールドと交換できる、というわけです。
この時日本円は「1ドル=360円の固定相場」というように、各国通貨の価値がドルに紐づけられ、そのドルの価値はゴールドに紐づけられ、ということになったわけです。
さて、ドルの価値を「エイヤッ!」と決めてスタートした世界の金融システムでしたが、その後世界の経済のパイが思いのほか大きくなると同時に、基軸通貨ドルを持つアメリカ経済がベトナム戦争などで疲弊し、ドル基軸体制の維持が厳しくなってきました。
ブレトンウッズ会議からわずか27年後の1971年、アメリカは「ゴールドとドルの兌換(交換)を停止する」と発表したのです。つまりこの時にドルの、ひいては世界中のお金の価値の裏付けはなくなったわけです。